岩沼からの手紙 2014年5月

区画の広さは120m×80mという規模
区画の広さは120m×80mという規模

被災沿岸部では農地の区画整理が行われている。この区画整理は農地利用の効率化に加え、震災を機に離農する人の農地をその地域で中心となっている人に集めること目的とした政策である。

 

5月10日に工事の完了した農地が先行して農家に引き渡された。他の農地は今年度末と来年度中に工事を終え、引き渡す計画となっている。センターのある下野郷の農地は先行する農地に含まれ、その日から周囲の農家の方々は忙しそうに動き始めた。

たいてい東北はGWかその次週には田植えが行われ、このような遅い時期の作付は初めての経験だという。また、区画整理後は1ヘクタール規模の農地となり、そのような広大な農地の管理も初めてだという。

 

こういった不安の声を会話の中で何度か聞いた。その時に感じたのは、農家は営農を続けられる限りは続けたい考えだが、国はこの機に将来離農するだろう家々の農地の集約を行いたい考えの様で、両者の求めるものが噛み合っておらず、無理やりはめ込んだ形で進行している。これは将来を見据えると危ない橋のように思う。10年後に耕作者がいなくなることもあり得る。

 

奇しくも、震災後のこの時は農業の転換期に差し掛かっている。

これまで通りでありたい農家の古い考えが新たな考えへと変わること、そして国の要求を過不足なく農家に伝えて政策を強制されるのではなく、農家の意志として行うように話し合うこと、互いの主張をすり合わせる妥結ではなく両者の歩み寄りが求められている。

 

ここ数年、この時期に岩手に足を運んでいる。それは大槌町の吉里吉里小学校にプール掃除用のEMを届けるためだ。これは今年で三度目になるが、アガペーCGNという教団内での別のボランティアグループの関係で頼まれて得た関係である。屋外にある学校のプールはシーズン外に藻や苔が生え、それを落とすのに多量の洗剤や労力を必要とする。環境に配慮し、かつ楽に落とせるようにと考えられた方法がEMを投入する手段である。

 

配達の帰りに、毎年届けてもらうのは悪いから今後は自分達でEMを用意していきたい、と言われたので、気仙沼のEM指導者を紹介した。その方は微生物の万能さを通して自由な発想を育むように年齢性別問わず幅広い分野で教えている。特に、未来を担う人を育てたいという想いで小学校に足を運ぶことを楽しみとしているようだ。その方との関係も吉里吉里小学校との関係も震災の中で築かれたものだが、今後はどう転んでいくのか楽しみに待ちたい

 

ただ、吉里吉里小学校は遠いため、今後は意識していかないと、これで関係が終わってしまう恐れがある。ボランティアの抱く悩みはまさにこれだと思う。奉仕に行くだけ行って終わるのでは自分も相手も寂しくつまらない、その後も自ら想い祈り動こう。僕の当面の目標は観光に行く、言うは易し行うは難し

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